前川進介の政治日記

議会報告 2022.2.16

燃やすごみ袋半額化議案否決の真相と、丹波市政の分断(前編)

はじめに


丹波市議会は12月定例会で提案された「燃やすごみ袋半額化議案」を否決しました。「2万円商品券給付議案」に続き、再び林市長の公約が否決された結果となり、市内では大きな反響が出ています。

私はこの議案に「反対」しましたので、本会議で否決した翌日に行った市民との意見交換会では、「なぜ市民側の立場の議員が反対するのか」「困窮者の現状をわかっているのか」「言い訳なんか聞きたくない!」など、多くの市民から怒りの声をぶつけられました。

そりゃ私だって、そうやって市民から怒られるよりも喜んでいただきたいので、それだけを考えたら賛成という立場を取りたかったですよ。だけど、今回の議案が可決されたら、丹波市廃棄物処理行政がお先真っ暗になってしまうことが強く懸念されたので、私は反対しました。

この否決によって、世間では「公約つぶし」「市長選の禍根が・・」という話題も挙がっているようですが、私に関してはそれにまったく該当しません。是々非々で審議して「反対」しました。

ただ、丹波市政は皆さんが思われるような「市長 V.S. 議会」という対立軸が鮮明になってきたようにも感じます。徐々に徐々に進行してきた「丹波市政の分断」が、ここにきて一気に加速しそうな気配もあって、個人的にはとても危惧しているところです。

このブログでは、今回の「燃やすごみ袋半額化議案」が否決となった経緯と、「分断」を食い止め、建設的な丹波市政に改革していくために必要な考え方・在り方などを、私なりに書きました。

とても長い文章なので(全編)(中編)(後編)と3編に分けておりますが、全てをじっくり読むと小一時間ほどかかるかもしれません。お時間のない方は、次の「要約」だけでも読んでいただければと思います。



要約

【議案否決の要約】


・丹波市の燃やすごみ袋料金は県下で最も高い(大:80円)
→メリットは「少しでも安く済ませたい!」という動機で分別が促進されてきたこと(一人当たりの家庭ごみ排出量の少なさは県下5位)
→デメリットは市民の直接負担が大きいこと、他所から見てイメージが悪いこと。

・丹波市クリーンセンターでは山南地域を除く5地域から、すでに安定稼働できないほどのごみ量を受け入れているが、令和9年度からはさらに山南地域のごみも受け入れることが決まっている。そのため現状よりも2割程度は削減する必要がある。(丹波市民の家庭ごみ排出量の少なさに置き換えると、現状の県下5位からぶっちぎり1位になる必要がある)

・燃やすごみに混ざりがちな資源(紙類、生ごみなど)の分別を促進させるための施策は、丹波市はまだまだ不足しており、燃やすごみの減量化は市の施策展開次第で期待できる。

・平成23年に行った燃やすごみ袋料金値下げ(100円→80円)では、減少傾向にあった燃やすごみ量が増加に転じ、処理及び維持費も高騰した事実がある。

・そんな中で「ごみ袋半額」を公約に掲げた市長が民意を得て当選

・ごみ量減少傾向の中で2割値下げしただけでもごみ量が増加に転じたのに、ごみ量が増加傾向にある今の状態で半額まで下げるにためは、相応のごみ減量化施策を打ってからでないと、令和9年度から山南地域のごみを受け入れることがより困難になるのではと懸念された。

・そこで議会では、「民意である半額化」と「喫緊の課題である減量化」の両方を実現させるためには、まずは減量化施策を打ち、市民の行動変容が促されてから半額化を導入すべきと考え、市当局にその旨伝えてきた。

・しかし市当局は、審議会の答申を根拠に、半額化と減量化は別々の施策だと主張し、減量化施策の前に「燃やすごみ袋半額化議案」を12月議会に提案。

・議会では主に、「半額化」と「減量化」の関係の有無についてや、その順序の在り方についてが争点となったが、市当局の「半額化と減量化は別々の施策」という一点張りで、議論は平行線のまま採決へ。

・結果、賛成6、反対13で否決。



【丹波市政の分断に関する要約】


・「2万円商品券給付議案」で市長の主張を受け止めようともしなかった市議会の態度に端を発したと考えられる「市長 V.S. 市議会」の二項対立。

・「燃やすごみ袋半額化議案」では逆に市議会の意見が市当局に受け止めてもらえず、議論が平行線のまま否決。

・市当局と市議会の「対話」不足は明らか。「市長 V.S. 市議会」の二項対立でお互い聴く耳を持たず主張するばかりでは、今後「丹波市政の分断」が加速することが懸念される。

・市政の分断で政治が停滞すると、その実害を受けるのは市民である。またその市政の分断が市民の分断にまで及ぶことが懸念され、地域コミュニティの在り方にまで影響しかねない。

・特にコロナ禍になって対面で対話する機会が減っている。誤解のないようなコミュニケーションを取って、建設的に対話し合える関係性に修復していくことが必須。

・そんな中、議員有志で自己肯定感を育む子育てを研究しており、自己肯定感を育み尊重し合う関わり方を、まずは議員自らが議場で実践しようという動きもでてきた。

・市長室の扉はいつも開いている。

・「市長 V.S. 市議会」の二項対立という考え方から、互いが考えや気持ちを受け止め合い、対話的な関わりの中で政策の提案・決定・執行を行える丹波市政になるよう、今後、微力ながらも市政改革を進めていきたい。




1. ごみ袋半額化の賛否を決めるうえで押さえておく必要がある6つの前提


今回の議案を審査するにあたっては、以下の6つの前提を踏まえておく必要がありましたので、まず最初に共有させてください。


①県下一高い丹波市のごみ袋料金の設定には、燃やすごみ排出量を抑制させる狙いがあり、その結果、丹波市民の家庭ごみ排出量は県下5位の好成績。

②にも関わらず、山南地域を除く5地域から排出される燃やすごみを処理している丹波市クリーンセンター(平成27年竣工)は、現状ですでに安定稼働できないほどの量を受け入れている

③さらに、現在丹波篠山市清掃センターで処理している山南地域のごみを、契約満了につき令和9年度から丹波市クリーンセンターで受け入れることが決まっている

④山南地域の燃やすごみを丹波市クリーンセンターで受け入れるためには、県下5位の好成績の現状から、さらに2割程度は燃やすごみを削減する必要がある。

⑤平成23年に行った燃やすごみ袋料金値下げ(100円→80円)で、それまで減少傾向にあった燃やすごみ量が増加に転じ、処理及び維持費も高騰した事実がある

⑥令和2年、ごみ袋半額を選挙公約に掲げた林市長が民意を得て誕生した

以下、詳しく書きますね。


前提① 県下一高い丹波市のごみ袋料金の設定には、燃やすごみ排出量を抑制させる狙いがあり、その結果、丹波市民の家庭ごみ排出量は県下5位の好成績。


令和3年3月4日に開催された民生産建常任委員会で市当局から配布された「丹波市のごみ減量化の取り組みについて〜適正なごみ収集手数料の設定を目指して〜」によると、


受益者である市民に、ごみの排出量に応じた相応の負担をいただくことで、高いごみ袋料金を意識し、家庭から出るごみをできるだけ減らすとともに、ごみと資源物に分け、環境に負荷をかけないという意識を醸成して頂けるよう、ごみ処理経費の22%を基準として設定してきた。



とあります。

燃やすごみ袋料金を高くすると、「できるだけ燃やすごみを減らして損したくない」という経済的な動機が生まれるので、丹波市はその動機を活用して市民のプラごみや雑がみなどの分別を促進させてきた、っていう話ですね。


ちなみにごみ袋の料金は「ごみ処理経費の22%を基準として設定」とあるように、燃やすごみ袋大に入っているごみを処理するのに、実際には約400円の経費がかかっていて、そのうち8割320円を丹波市が負担、残り2割80円を受益者である市民が直接負担するという分担割合になっています(まぁ前者の320円も市民税などで市民が間接的に負担しているのですけれども)。


次に、


その結果、平成30年度の丹波市民1人1日当たりの家庭系ごみの排出量(資源物を除く)は442g(県下5位)と一定の効果を上げてきたと評価できる。



とあるように、80円という県下で一番高い燃やすごみ袋料金の影響もあってか、丹波市民一人あたりの家庭ごみ排出量は、県下で5番目に優秀な成績のようです。


これが良い政策かどうかは別にして、これまでの丹波市の燃やすごみ減量化の方針はこうだったよ、という話です。




ちなみに近隣市町と比較すると、この料金差。確かに高いです。

ごみ袋料金の近隣市町との比較



前提② にも関わらず、山南地域を除く5地域から排出される燃やすごみを処理している丹波市クリーンセンター(平成27年竣工)は、現状ですでに安定稼働できないほどの量を受け入れている


現在山南地域を除く5地域から排出される燃やすごみは、平成27年に竣工された丹波市クリーンセンターで処理されているんですが、安定稼働の目安でもある処理計画値12,509トンに対して、現状(令和元年度)では5地域ですでに13,031トンの燃やすごみが排出され、それをなんとか受け入れています。丹波市民の家庭系ごみの排出量が県下5番目に少ないにも関わらず、丹波市クリーンセンターはすでに安定稼働できない状態に陥っているのです。



前提③ さらに、現在丹波篠山市清掃センターで処理している山南地域のごみを、契約満了につき令和9年度から丹波市クリーンセンターで受け入れることが決まっている


さらにですよ、旧山南町と丹波篠山市とが交わした契約が令和8年度で満了となることから、令和9年度からは山南地域のごみも丹波市クリーンセンターで受け入れることが決まっているんです。

前提②にある写真で言うと、計画量12,509トンに対して、現状すでに受け入れている5地域の13,031トンに加え、山南地域から排出された1,750トンを合算した14,781トンの燃やすごみを受け入れなければならないのです。さすがにこの全量を丹波市クリーンセンターで受け入れるのは、無理!
(この資料にはありませんが、令和2年度はさらに悪化し、過去最高の15,160トンを記録している状況です)



可燃ごみの減量は、極めて重要な課題で、喫緊に取組む必要がある


そりゃそうですよね。喫緊の課題です。

しかし、ふと、林市長が就任するまでなぜこの大問題が表に出てこなかったんだろう・・



ちなみに現在山南地域のごみを処理するのには、毎年割高な約1億円を払い続けているので、令和9年度からの受け入れが実現できれば、この1億円を外に出す必要がなくなります。



前提④ 山南地域の燃やすごみを丹波市クリーンセンターで受け入れるためには、県下5位の好成績の現状から、さらに2割程度は燃やすごみを削減する必要がある。


というわけで、令和9年度から山南地域のごみをも丹波市クリーンセンターで受け入れ安定稼働させるには、現状よりさらに2割程度は削減する必要があるのです。

前述しましたが、市民一人あたりの家庭系ごみの少なさがすでに県下5位という好成績の丹波市民が、ここからさらに2割程度は削減しなければなりません。

丹波市民一人あたりの家庭系ごみの排出量が442g、県下1位の加東市のそれで370gですから、もし丹波市が2割削減に成功したら354gとなり、ぶっちぎりの県下1位となります。

逆に言うと、ぶっちぎりの県下1位にならない限り、山南地域のごみを丹波市クリーンセンターで受け入れ安定稼働させるなんてできないのです。これは本当に困難を極める状況なので、本腰入れて緻密な政策展開をする必要があります。


「じゃぁハナからもっと規模の大きいクリーンセンターを造っておけばよかったのに!」という声も聞きますが、廃棄物処理は広域行政で行うことが基本路線だったので、丹波市独自で大きな炉を構えることが難しかったという側面もあるようです。

それに、建設はもう終わった話なのでそこを議論しても仕方ありません。当時の市長が小さい炉を提案し、当時の議会がそれを議決したんだから、あとはそれに応じた施策を展開していくしかないわけです。



前提⑤ 平成23年に行った燃やすごみ袋料金値下げ(100円→80円)で、それまで減少傾向にあった燃やすごみ量が増加に転じ、処理及び維持費も高騰した事実がある


この当時の改定には、


これまでの料金設定は、一定の効果をあげ、市民に減量意識が浸透してきたことと併せ、処理経費も減額出来た。

「丹波市のごみ減量化の取り組みについて〜適正なごみ収集手数料の設定を目指して〜」



という背景があったようです。長年100円で推移してきていて、もう市民の分別習慣が定着しただろうという考えがあったこと。また処理経費の22%をごみ袋料金とする考えから、80円への値下げが行われました。

しかしながら、料金を改定した結果として次の現象が確認されています。


●生活系可燃ごみの増加
H22まで減少傾向にあった、可燃ごみは増加に転じた 

●処理及び維持費が高騰 
中間処理費の増加が顕著

H22 9,593ton 829百万円
H23 9,914ton 894百万円
H24 10,028ton 880百万円

「丹波市のごみ減量化の取り組みについて〜適正なごみ収集手数料の設定を目指して〜」



年々燃やすごみ排出量が下がってきたから、分別が定着したと判断していたけれども、燃やすごみ袋料金を下げたところ、燃やすごみ排出量も処理経費も増加に転じてしまった、という話です。


淡い緑色の「計画収集量」が燃やすごみ袋で回収された数量。


直接搬入分と合算すると、平成25年度には値下げ前と同程度の燃やすごみ量に戻っています。しかし現在は再び燃やすごみ量が増加傾向にあり、市当局も「極めて危機的な状況」と捉えている中、これ以上燃やすごみ量が増えることはクリーンセンターの安定稼働を阻害します。



前提⑥ 令和2年、ごみ袋半額を選挙公約に掲げた林市長が民意を得て誕生した


そんな状況下で、ごみ袋を半額にするという公約を掲げた林市長が誕生したわけです。

100円から80円に2割下げただけで増加に転じたのに、増加傾向にあって処理場のキャパがパンパンのこのタイミングで、ごみ袋半額化の民意を得て林市長が誕生したのです!

カオース!!!



2. 民意を反映したい気持ちはあります


突然ですが、私は封建的な社会が嫌いです。先生の言うことを聞け!親の言うことは絶対だ!などと言われて育てられてきた子ども時代は本当にイヤでした。やっぱり言いたいことを言える社会が心地いい。

何が言いたいのかと申しますと、この国の統治は民主制度なんだから、民意を大切にしたいという気持ちがあるということです。だから私は自分本位な考えや、党利党略で政治判断を致しません(そうなったらさっさと政治家なんか辞めて、一民間人として人生を楽しみます)。

丹波市の廃棄物処理行政が、現状でかなり厳しい状況下あることは前述の通りですが、しかしながらごみ袋半額を公約に掲げた市長が当選された以上は、その民意を受け止めなければなりません。だから公約実現に向けて、私は前向きに取り組む考えです。

だって、それが民意なんだから。



さらに、昨年3月議会(だったかな?)で、林市長は「丹波篠山市清掃センターでの処理にかかっている経費をごみ袋半額化の財源に充てがう」旨の答弁をされました。

私は人も地域も自立を目指す姿勢が大切だと考えています。そんな私からすると、今丹波篠山市に頼っている山南地域のごみ処理を、丹波市独自で果たし、その浮いた経費を市民に還元するという方針には非常に共感しますし、この答弁を聞いてそれが果たせるよう全力で応援したい気持ちになったのを、今でも覚えています。

だからごみ袋半額化が実現できるよう、こんなブログを書いて市民の分別意識の向上を図ってみたり、6月議会で分別が促進されるような具体的な提案を行なったりしてきました。



3. 私が考える半額化への道筋


そんな私が考える半額化への道筋は、この3ステップです。

⑴資源とごみの分別が促進されるような施策を打ち出す
⑵市民の分別行動が定着するだけの一定期間を置く
⑶燃やすごみ袋を半額にする


この順番がとても大事。


前提⑤でも書きましたが、丹波市は過去に100円→80円に値下げした際、それまで減少傾向だった燃やすごみ量が増加に転じ、ここ最近も増え続けています。

そう、今は燃やすごみの量が増え続けているのです。

ごみ量が減少傾向にあった時にごみ袋料金を2割減しただけで増加に転じたわけですから、増加傾向にあってクリーンセンターが安定稼働できないほどのごみ量を受け入れている現状で、半額化まで踏み切るには、それ相応の準備が必要だと考えるわけです。

だからまずは行政が、一人でも多くの市民に分別行動が定着するような施策を打ってから、ごみ袋料金を半額化。この順番が極めて大事。


誤解のないように申し添えておきますが、この考えは決して丹波市民を愚弄しているわけではありません。兵庫県下で家庭ごみ排出量の少なさぶっちぎりNO.1を実現してクリーンセンターを安定稼働させるには、まずは行政が最大限の施策を果たす必要があると言う主張です。我々市民はその施策に乗っかればよいのです。



4. まずは先行してプラごみ袋の値下げ案


さて、私のようにこの「ごみ袋半額化」の実現を応援している議員は他にもいらっしゃいます。昨年の3月議会では小川議員からこのような提案がありました。


プラスチック容器包装の分別を促進させるためにも、まずはプラスチック系ごみ用袋(以下「プラごみ袋」)を値下げしてはどうか?



この提案をキッカケに、市当局は早速4月20日には「丹波市廃棄物減量等推進審議会」に対して、同年8月からプラごみ袋を半額以下に料金改定(大:50円→20円、中:30円→15円)することに対して諮問しました。素早い展開で、心地よいです。

その趣旨にはこう書かれています。


(前略)令和9年4月から丹波市クリーンセンターで山南地域のごみを受け入れ、安定した施設運営を行うには、燃やすごみの減量が喫緊の課題となっております。
そこで、燃やすごみに混入されていると考えられる容器包装プラスチックの分別徹底を図るため、経済的な動機付けを行い、その結果、市民一人ひとりの燃やすごみの増加に対する意識が高まることを期待し、ごみの分別がより一層推進されることを目的に、プラスチック系のごみ袋料金を減額することについて、貴審議会の意見を求めるものです。



要は、

燃やすごみ袋80円
プラごみ袋50円
差額30円

だった料金設定を、

燃やすごみ袋80円
プラごみ袋20円
差額60円


にして、その差額分に生まれる経済的な動機(安く済ませたいという市民の気持ち)によって、燃やすごみとの分別を促進させましょう、ということです。



①県下一高い丹波市のごみ袋料金の設定には、燃やすごみ排出量を抑制させる狙いがあり、その結果、丹波市民の家庭ごみ排出量は県下5位の好成績。

これも「経済的な動機付け」による考えでした。


このような「経済的な動機付け」は世の中的によくあるもので、例えば我が家の納豆事情。我が家でよく消費する定番の納豆を購入している先は、近所の中型スーパーAと、ちょっと離れた場所にある大型スーパーB。どちらも100円程度で売られているんですが、Aが2個パックなのに対してBは3個パックでそのお値段。スーパーBは自宅から遠いし、駐車場から店舗までの距離もあるし、レジでもけっこう並ばなきゃならない「手間」がいっぱいあるんですが、この価格差がこれらの手間をいとわなくさせ、Bで大量購入することが多々あります。

こうした経済的な動機付けで私たちの日常は変わりますし、その「価格差」は大きければ大きいほど、その行動変容が促されます。だから30円→60円と価格差を大きくすれば、市民が「手間」をいとわなくなるだろうから、燃やすごみ→プラごみの分別が促進されるはずだ!という作戦を市が仕掛けたわけです。



5. 燃やすごみ減量化施策を先に展開しないと半額化には賛成できないほど、丹波市の廃棄物処理は危機的な状況


丹波市議会は6月議会において提案されたこの「プラごみ袋半額化議案」を、全会一致で可決しました。反対する理由がどこにもないですから。

ただしこの議案には、廃棄物処理行政を所管する民生産建常任委員会から以下の意見を付しています。


⑴プラスチック系のごみ袋代金の値下げを契機に、市民ぐるみでごみ減量化が図られるよう周知徹底されたい。
⑵ごみ減量化、資源化を進めるため、雑がみ回収の充実等多様な政策を並行して行うべきである。



要は、プラごみ袋料金を下げるのはいいんだけど、さらなる減量化への啓発と、プラごみ以外の資源分別を促進する政策も展開していってね、という注文を付けたわけです。

なぜかと言うと、この時すでに、というか、令和3年3月時点ですでに、「燃やすごみ袋半額化議案」を12月議会に提案するスケジュール案が資料として提出されていて、「減量化施策の前に半額化施策を提案されるのかもしれない。その順番では山南のごみを受け入れられなくなるんじゃないか。」という危機感が、民生産建常任委員会にあったからです。

だから、まずは様々な減量施策を行い、その効果の見通しを立ててから半額化の検討をすべきだ、という意図の「牽制」文を送った形になります。


実際、同年8月からこのプラごみ袋料金改定が行われてプラごみの分別促進が図られたわけですが、市当局からは「分別は促進されたものの、市当局が期待したほどの効果ではなかった」との報告が委員会でなされました。

プラごみの分別にはごみ袋料金の改定だけでなく、他にも工夫が必要だったのかもしれません。そのあたりの検証がないまま半額化に踏み切るのは危険すぎるというのが、民生産建常任委員会の考え方でした。



また、プラごみ以外にもまだまだ分別すべき資源はあります。

我が家は生ごみは鶏のエサとして消費し、剪定枝は薪ストーブ・薪ボイラーの燃料にするなど、それなりにごみの減量化を進めていました。しかし恥ずかしながら去年の3月議会で紙製容器包装(紙マーク)の分別回収について初めて知り、そこから紙製容器包装の分別もし始めました。雑紙は3ヶ月に1回の回収とのことだったので、3ヶ月も溜め込むことに難を感じましたが、家族の協力を得て分別を始めました。

ところが!そもそも私が住んでいる南中自治会は屋根のついた回収拠点がないとの理由で、これまで一度たりとも雑がみを回収されたことがなかったのです。道理で我々南中自治会に雑がみ分別の習慣がなかったわけだ(笑)(そのあたりのズッコケ話はこちらのブログに書いています)

そんな自治会が多くあるなら市民の分別なんて定着されるはずがないから、例えば市役所各支所や商業施設に雑がみ回収ボックスを設けるなど、すぐに対策を取っていただきたいと令和3年6月議会の一般質問で提案するなどして働きかけてきました(6月議会の内容はこちらのブログ)。


しかし、それに対してこれまで一切対策を講じていただけませんでした。私は補正予算を提案してでも、そのような対策を講じるべきだったと思います。

だって分別しづらい環境のままで燃やすごみ袋料金が半額になったら、もう雑がみなんて分別せずに燃やすごみとして出してしまえ、と思うのが自然じゃないでしょうか。我が家でこうして溜めてきた雑がみも、随分と場所を取るようになりました。どう考えてもジャマなんで、燃やすごみ袋が安くなるなら、もうその袋に入れて出してしまいたくなります。

我が家で溜めてきた紙マークの雑がみ





減量化施策をないがしろにしたまま、民意があるから勢い半額化に進む、なんてことを議会が許してしまっては、将来的にまた莫大な税金を投じて焼却炉を建てたり他の自治体に処理を委託したりしなければならない恐れがあり、その政策展開によっては返って市民への負担を増大させてしまうかもしれません。

「お父さんたち政治家が、あとちょっと半額化を遅らせていたら、こんな何十億も使って新たな焼却炉を造らなくてもよかったのに!」なんて子どもたちの代で言われたくないです、私。

丹波市の将来のため、それを担う子どもたちのためにも、私はそれは絶対に避けたい考えです。だから打つべき減量化施策を全て打って、それから半額化する順序を踏んでいただきたいのです。


もちろん何も未来永劫半額化に反対しているわけではありません。平成23年に80円になってから10年間も80円で継続してきました。それを市長公約で4年間の任期中に半額化を果たせばよいわけでしょうから、拙速に半額化せずに、まずはしっかりと減量化を進めていただき、半額化の話はそれからでも遅くはないでしょう、というのが私を含めたほとんどの民生産建常任委員の考えでした。




続き→ 「燃やすごみ袋半額化議案否決の真相と、丹波市政の分断(中編)
そのさらに続き→ 「燃やすごみ袋半額化議案否決の真相と、丹波市政の分断(後編)

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