前川進介の政治日記

議会報告 2023.3.28

林市長は、子どもの人権や自己肯定感のことを理解していなかったし、学ぶ姿勢すらなかったんだ・・・

2023年3月定例会では市長の残念な答弁がいくつもありました。ブログを書くなら、できれば楽しい話題をピックアップして皆さんと楽しみたいところですが、議会で起きている実情を広く市民の皆さんにお届けすることを心掛けている私としては、今回はその一端くらいは触れておかなきゃならんと思い、その残念さについて書くことにします。


「帰ってこいよ」は時代に合っていない人権軽視なフレーズやで

毎年3月定例会では、新しい年度に向けた方針を市長、教育長が発表されます。そしてそれらの方針に対して、議会側からは会派を代表して「代表質問」を行うのが通例で、私は昨年12月から小橋議員と結成した会派「こどもとみらい」を代表して、質問いたしました。

今回の代表質問の一つ目は、市長がよく言う「帰ってこいよ」のまちづくりについて、この上から目線で過干渉な「帰ってこいよ」のフレーズを無くした方がUIターンを促進できるんちゃいますか?という問いでした。

え!?「帰ってこいよ」の何があかんの?と思われる方もおられると思いますんでご説明しますと、要点は二つありまして、一つは「ジェネレーションギャップがあって、今の若者に向けた言葉としては不適切だ」ということと、もう一つは「人権軽視の表現だ」ということです。


特にZ世代に代表される最近の若者は、生まれた時からインターネットに繋って、スマホやSNSを当たり前のように使いこなしている影響で、様々な価値観に触れ、多様性を当たり前のこととして捉えています。そのため、自分らしさを尊重し、自分のペースで生きることを大切にしているように私には映ります。

私のような40代のおじさん世代は、まだ「努力」「規律」「忍耐」みたいなワードが美徳とされていた価値観に馴染みがありますが、今の若者は大義名分よりも「自分らしい」「居心地がいい」「楽しい」みたいなワードの方がウケがよさそうです。40代の私の感覚でもそれくらいのギャップを感じているんだから、これが高齢者とZ世代となると、そのジェネレーションギャップたるやもっとでかい。

そういう「努力」「規律」「忍耐」が通用しづらい最近の若者だから、離職率が高いのも頷けます。その良し悪しは別として、とにかく合わないならさっさと辞める。そして他の選択肢を探す。だってその方が自分らしく生きてけるんだもん。

だから居住地だって本人が自分らしく生きられそうだと思ったら帰ってくるでしょうし、そうでないなら帰ってこないわけで、つまり彼らにとってそんなものは本人が決めることなんですね。

それにも関わらず上から目線で「帰ってこいよ」という過干渉な言い方をしてしまうと、丹波市は自分らしさが尊重されない地域なんだと敬遠されてしまうのではないかと危惧しているわけです(年配の方からすると「え!?」と思われるかもしれませんが、この世代間ギャップは確実にあります)。


続いて2点目の「人権軽視の表現だ」という指摘について。今回の代表質問ではこの問題を「人権」の文脈でも言い換え、市長に質しました。我々丹波市議会は、「こどもの権利に関する理念条例調査研究特別委員会」を立ち上げ、市民参画を促しながら子どもの人権を大事にしようという機運を高めているところですしね。

では、「帰ってこいよ」を「人権」の文脈で考えてみましょう。まず子どもの権利には大きく4つあります。「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」。これらは国連で採択されている「子どもの権利条約」で定められているので、即ち世界基準の話です。


(出典:公益財団法人日本ユニセフ協会ホームページ)



この4つの権利の中で、最初の3つ「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」はストンと腹落ちしやすいと思いますが、「参加する権利」の意味はよくわからんという人も多いんじゃないでしょうか。この「参加する権利」とは、自由に意見を表明したり、集まってグループをつくったり、自由な活動を行ったりできること。つまり、子どもの意思を尊重しましょうという話で、これは日本国憲法第13条の幸福追求権を根拠に認められている「自己決定権」にも通じる権利です。

ところが、令和4年度に策定された『丹波市人権施策基本方針』には、「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」は市としての方針が述べられているものの、「参加する権利」に関しては市としての方針が全く述べられていないんです。つまり、「子どもの意思を尊重すべきなんだ」「過干渉な関わりはその子の人権を軽視することになっちゃうんだ」という観点自体が、丹波市役所ではごっそり抜け落ちている状態なのです。

子どもの参加する権利に関する方針がごっそり抜け落ちている丹波市人権施策基本方針



だから市長にはその旨を伝え、市長が言う「帰ってこいよ」という過干渉なフレーズがその丹波市の人権軽視の象徴になってしまわないか、という指摘をしたんです。

ちなみに、2/4に特別委員会が主催した「こどもの自己肯定感を育む講演会」においても、参加者の子育ての反省の弁で一番多かったのが「子どもに干渉し過ぎて子どもの考えを尊重できなかった」というものでした。

こどもの自己肯定感を育む講演会の様子



参加された市民の皆さんも子どもの権利や自己肯定感について関心度が高く、とても充実した講演会になったわけなんですが、さて、うちの市長はと言いますと、先ほどの「帰ってこいよ」が丹波市の人権軽視の象徴になってしまわないか、という指摘に対する答弁の中で、こんな発言が・・・。

「子どもの参画する権利とか、そこまで踏み込んで考えたことはないです」
「子どもの4つの権利ということまでは考えてございません」


え、市長は子どもの人権について深く考えたことがない?????????

この市長答弁を受けた私は、後からじわじわと腹立たしくなってきました。と言うのも、私は2021年9月議会の一般質問では子どもの人権に関してこんなやりとりがあったからです。



子どもの人権について十分理解していると言ったのに、実は理解していなかった市長

このブログにも記載している通り、令和3年9月定例会の一般質問ではこう問うています。

⑶「子どもの権利に関する総合条例」を制定しないか

 そこで、我々市民の中でも特に立場の弱い存在である子どもの人権を徹底的に守る丹波市になるために、「子どもの権利に関する総合条例」を制定してはいかがでしょうか?

 令和3年4月現在、全国で50の地方自治体が「子どもの権利に関する総合条例」を制定しています。これは、平成元年に国連で採択された「児童の権利に関する条約」がベースになっている条例です。

 同条約は、18歳未満の児童の権利の尊重及び確保の観点から、大きく分けて4つの子どもの権利、「生きる権利」、「育つ権利」、「守られる権利」及び「参加する権利」を定めています。

 この条約の理念を踏まえ、子どもの権利を保障し、それに関する施策を推進することを主たる目的とした条例が全国各地で制定されてきているのです。



このように、私は2021年9月議会の一般質問で子どもの4つの権利についても説明し、その上で条例制定しないかと提案したわけですよ。その質問に対して市長は、

>議員ご提案の「子どもの権利に関する総合条例」が目指す理念については十分理解するところではありますが、その制定につきましては、必要性を含め、調査・研究してまいります。

と、「理念についてはわかっちゃいるけど、条例制定は今のところやりません」的な答弁をしたんですがね、ここに矛盾を感じませんか?


今回、

「子どもの4つの権利ということまでは考えてございません」

という答弁があったわけですが、それだったら

>「子どもの権利に関する総合条例」が目指す理念については十分理解するところ

という以前の答弁が嘘になります。だって、4つの権利の考えなくして「十分理解するところ」なんて言えるはずがないですから。


さらに、以前の答弁である

>その制定につきましては、必要性を含め、調査・研究してまいります

の言葉通り、本当に調査研究しているんだったら、あれから1年半も経過しているこのタイミングで

「子どもの参画する権利とか、そこまで踏み込んで考えたことはないです」

なんて言葉は出てこないはずです。



林市長は元から自分たちで条例制定する気はないし、子どもの権利について調査研究すると言いながら、実際は学ぼうともしない姿勢だったということです。どうせ部下が作文した答弁書を朗読しただけなんでしょうけど、誰が作った文章であっても自分の口から吐く言葉には責任を持っていただきたい!こんなんだから丹波市の子育て支援の中身が、バラマキ的な薄っぺらいものになっているんだろうと察しがつきます。

当時、市長が条例を作る気がないということだったので、そっちがやらんのやったらこっちでやったるわい!と、私は議員たちにその重要性を説いて仲間を作り、2022年6月議会で「こどもの権利に関する理念条例調査研究特別委員会」を立ち上げました。

この特別委員会の構成員は議員定数の半数もの10人です。議員は市民の代表なんで、それってつまり民意ですよ。子どもの権利擁護について、市民がそれだけ重要視しているということです。実際に2月に行った講演会でも、その市民の熱量を感じましたしね。

だから、自分たちで条例制定する気がなかったとしても、民意を汲んでせめてお勉強くらいはしておいてほしかったですね。必要性を訴えても動かないし、知ろうともしない。もう残念としか言いようがありません。

そしてさらに残念なのが、今その特別委員会で条例制定に向けて活動しているわけですが、我々が努力して条例を制定したところで、執行権者である市長に人権の知識・意識がなければ、この条例は形骸化して絵に描いた餅で終わってしまうということです。

子どもの権利を守ることと、子どもの自己肯定感を高めることは同義ですから、このままでは丹波市の子どもたちの自己肯定感を高めることは難しい。自己肯定感が低いと、不登校、いじめ、引きこもり、鬱、自殺、このような事態を招きやすくなってしまいます。ただでさえ丹波市は県下でも自殺率が高いと言われているのに、なんでそれを抜本的に改善しようとしないのか。

市長の無理解、これは困りました。


「子どもの人権」等の内容について勉強しようともしなかった市長

と言うわけで、先日市長室に行って、市長と話をしてきました。

基本的に議場以外での話はこうしたブログやSNSには載せないようにしていて、だからこそ市長には公開の場での議論を求めていますが、市長からは「市長室に来てほしい」と言われ、今回はその市長室で議論しました。基本的に政治についての議論は公開すべきですし、市長からも「市長室での話を公開することは任せる」と一任されましたんで、今回は先の一般質問に関連する内容に限ってブログにて公開します。



令和3年9月議会で

>議員ご提案の「子どもの権利に関する総合条例」が目指す理念については十分理解するところではありますが、その制定につきましては、必要性を含め、調査・研究してまいります。

と答弁されたことに触れ、「2021年9月の一般質問ではこう答弁しているのに、矛盾してるじゃないですか」と問うと、まず

「『調査・研究する』ということは『やらない』ということや」

と丹波市政の「常識」を教えていただきました。すいませんね、私は非常識な新人議員なんで、そんな「常識」は知りませんでした。


さらに、

市長:「そんな一つひとつ中身のことまで勉強するとなったら、アレもコレもと他にもいっぱい勉強せなあかん。」

前川:「そりゃそうですよ、市長なんだから他にもいっぱい勉強したらいいじゃないですか。そこは優先順位を決めてやれば。それにしても子どもの人権に関する理解が浅すぎますわ。」

市長:「子どもの人権については、普通の人よりかは勉強しとる。」

前川:「そりゃそうかもしれへんけど、普通の人と比べる?」

と、こんな感じ。百歩譲って市民の代表である議員ならまだしも、市長は執行権を持つ当市の最高経営責任者で、年間600億円以上もの予算を司る人なんだから、そんな普通の人のちょい上レベルを期待しているわけじゃないんです。

もっと言うと、日本国憲法で保障されている人権を守る主体は、国や地方自治体ですよ。人権についてそこまで深く考えていない市長が、どうやって市民の人権を守れるんですか???

確かに市長になったら忙しくて学ぶ時間が持てないのかもしれないけど、前述の通り人権の話なんて市長になる前に学んでおくべきことです。3期12年間の議員生活の中でも、十分に学ぶ時間があったと思いますけどね。


とにかく市長には、子どもの人権について学ぶことの優先順位を上げてほしいと伝え、市長室を後にする際には「子どもの権利についてちゃんと勉強しときます」というお返事はいただきました。今更感は拭えませんけど、全く勉強されないよりかは遥かにマシです。


市長室



政府主導の異次元の少子化対策を見据え、丹波市が今から取り組むべき子育て支援策とは?

先日(3月20日)、自民党から「小中学校の給食費無償化」を政府に提案するという報道がありました。少子化対策の一環として、家庭の事情に関係なく支援するというもので、これから国をあげて少子化対策に取り組まれていくことが見込まれます。

一方で丹波市では、来年度予算案の目玉として、所得制限を撤廃して高校生までの医療費無料化を打ち出しました。これは市議会から何度も要請してきた事業なので、一定の評価をしています、が、本来であればこんなものは国の施策でやるべきことです。

今回自民党が学校給食費無償化を提言しているように、「異次元の少子化対策」を打ち出している政府だったら、この「所得制限を撤廃して高校生までの医療費無料化」にもそのうち着手するんじゃないかと私は予想しています。

そうなると、今回の予算案の目玉が目玉でなくなっちゃうんですよ。だって、全国一律でそうなるんだから。こうして、単なる予算配分を変えるだけのお金のバラマキ施策で他市と差別化しているようでは、我が市の子育て支援は完全に周回遅れになってしまいます。


じゃぁ何で差別化すべきなのかと言うと、もうわかりますよね、単なるお金のバラマキ以外の施策です。

例えば学校給食のオーガニック化。これは昨年ママさんたちから出された請願の紹介議員にもなりましたが、これを実現しようと思うと、まず有機農業に就いてくださる農家の数を増やしていかなければならないし、生産された農産物の流通システムの再構築もせねばなりません。さらに調理現場との調整も必要です。それらはお金のバラマキだけでは実現できるわけではなく、市長がビジョンを掲げて上司が頭を捻り、部下が汗をかかないと実現できないんですよね。

基本的に政府は大雑把な政策しか展開できないから、基礎自治体はこうしたきめ細やかな政策で市民の子育てを支援し、他市と差別化するべきなんですよ。


実は子どもの権利を守る地域社会を創ることも同じです。お金のバラマキだけでは絶対に不可能です。誰一人取り残さず、全ての子どもたちの権利を守る地域社会にするためには、もう文化レベルで根付かせていく必要があります。その文化は金では買えんのです。

今、特別委員会では究極のところ、その丹波市の文化を変えようとしています。これはかなり難しいというか、永遠に達成できないかもしれないほど気が遠くなる取り組みではありますが、追い風も吹いています。


この4月から「こども家庭庁」が立ち上がり、こども基本法も施行されますんで、子どもの権利を守ることがこの国のトレンドになっていきます

例えば子どもの人権侵害の象徴とも言えるブラック校則に対応すべく、文科省が昨年12月に「生徒指導提要」を12年ぶりに改定しました。これによってこれまで児童生徒を強制的に管理していた学校現場は、180度に近い変化を迫られ、これから数年間は大混乱になるんじゃないかと私は予想しています。

あの学校でさえ(と言うと失礼かもしれませんが)変わろうとしています。実際に丹波市の学校教育を司る片山教育長からは「子どもの参加する権利を重要視している」という答弁もあったので、彼はよく理解されているんだと感じています(片山教育長、児童生徒と教員の人権が守られるようなマネジメントをたのんます!)。


そんな時代の変革期に、

「そんな一つひとつ中身のことまで勉強するとなったら、アレもコレもと他にもいっぱい勉強せなあかん。」
「子どもの人権については、普通の人よりかは勉強しとる」


こんな発言が出てくるようでは、ちょっと不勉強が過ぎませんかね?



市長には本当に人権についての正しい理解を深めてほしいので、最後に、件の『丹波市人権施策基本方針』の冒頭に書いてあった「我が意を得たり」な言葉を市長に贈りたいと思います。

>一人ひとりが家庭や学校、地域、職場などあらゆる場面で、人権についての正しい理解を深め、人権尊重の理念を日常生活の中で自然に態度や行動に表すことができる人権文化の息づいたまちづくりをともに進めていきましょう。

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