前川進介の政治日記

議会報告 2022.4.30

3月議会での前川の質疑、意見まとめ(前編)

こんにちは。

3月議会で令和4年度予算の審査が終わり、ちょうど今頃、その議論の内容が掲載された議会広報誌『たんばりんぐ 4月号』が市民の皆さんの手に渡る頃だと思われます。

今回は、その議会広報誌『たんばりんぐ』にも一部取り上げられている、私が3月議会で発言した内容を前編・後編の2回に分けて記事にしました。また、最後にはその『たんばりんぐ』の在り方についても私見を述べています。

前川が普段の議会で何を話して、何をどう市政に反映させようとしているのか、これらの記事をご覧いただくとちょこっと垣間見えるかもしれません。お手元の『たんばりんぐ』と照らし合わせながらご一読いただければ幸いです。



ぜひお目通しください、『たんばりんぐ 4月号』を




1. さらなる移住者増に対応できるよう、移住施策の構造改革を!


コロナ禍の密を避ける思いからか、全国的に地方への移住を希望する人が増えています。丹波市ではそのような移住希望者がスムーズに移住を実現できるように、移住相談窓口「たんば”移充”テラス」を設置しています。

この「たんば”移充”テラス」は市から請け負った団体が週6日3名体制で業務に当たっていますが、令和3年度は年度途中ですでに4,000件を超える相談件数をこなすなど、コロナ禍で多忙を極めているようです。

そんな「たんば”移充”テラス」を活用して実際に移住された市民から、ちょっと残念なクレームを聞いていたので、令和4年度予算を審査するにあたって、その点について市当局に質疑しました。要旨は以下の通りです。



Q:「丹波市空き家利活用促進事業補助金」の活用には、自治会とのマッチングが完了していることが要件にある。しかし「移充テラス」が多忙すぎてかマッチングの日程調整にかなりの時間を要している案件があり、待たされている間に他市の物件に移住を決めてしまうケースもあると聞いている。

そこで、例えばマッチングの必須メンバーから「移充テラス」を外し、「移充テラス」の業務軽減並びに移住希望者のスムーズな移住を実現するなど、構造的な見直しをすべきではないか?



これに対して市当局からは、


A:現在のマッチングは「移充テラス」・市・移住希望者・自治会・不動産業者の5者となっており、日程調整には自治会の方の都合もお聞きして調整しますので、一定の時間がかかる案件も発生しています。今後は移住相談から移住されるまでスムーズに進むよう実態を把握しながら検討していきます。



との答弁を得ました。


コロナ禍の今は、丹波市の人口を増やすまたとないチャンスなんで、移住を希望する人がスムーズに丹波市に移住できるような体制作りをお願いしておきました。本来であれば移住を促進させるはずの組織がボトルネックになってしまっているようでは本末転倒ですからね。


後日担当者と話をしていると、この質疑を受けて、どうやら市と「移充テラス」の両方の出席が必要だったマッチングの出席者を、市または「移充テラス」のどちらかに変更するそうです。特に休日を「移充テラス」が担うことは、職員の休日出勤を減らして働き方改革を進めることもできますし、一石三鳥くらいありそうですね。

このGWにかけては移住相談の数が増えてくるでしょうから、3月のタイミングでこの質疑をしておいてよかったと思います。




2. 今どき正規雇用!?若者定住奨励は机上の空論か。


令和4年度予算には、「住みたくなる、帰りたくなるパッケージ 〜あなたに届けたい3つの支援〜」と称して、就職したら●万円、子ども産んだら●万円、移住定住したら●万円と、該当者には合わせて100万円以上が支援されるパッケージがあります。

同様の施策は他市でも行われているので、丹波市も負けじと導入する気持ちはわかりますが、スーパーの安売り競争じゃないんだから、こういうレッドオーシャンで金ありきの戦い方をするのは、個人的に好かんです。(これについては小橋議員が一般質問で同様のことを言及されていました。私も同感。)

だから昨年3月(だったかな?)の一般質問で、「移住施策はエッジを利かせて自立人材を呼び込むブルーオーシャンを創り出せ!」っていう話をしたんです。そしたらお金なんかかけずに面白い移住者を増やせるから、って。

これを「ランチェスター弱者の戦略」と言うんですが、その戦略で私の会社は最小限の経費でそれなりに稼いできましたし、ビジネスの世界ではけっこう当たり前の話でもあるんですよ。

なんですけど、丹波市では実現してもらえませんでした。まぁ丹波市に限った話ではないですけど、行政ってその多くが横並びで旧態依然としていますもんね。そりゃレッドオーシャンになるわ。


さて、そんな「住みたくなる、帰りたくなるパッケージ 〜あなたに届けたい3つの支援〜」の中には、令和4年度からの新規施策として「若者定住奨励金」があります。


「若者定住奨励金」
若者定住奨励金を給付することにより、「若いうちに丹波市に戻ってきたい」「子育てしやすい丹波市に住みたい」といった選択を促し、若者人口の増加を図ります。

[事業内容]
市内転入者のうち、起業または市内外の事業所に正規雇用された人に対し、就業6ヶ月時点で10万円を給付する

[対象者]
18歳以上30歳未満の市内転入者で企業または市内外の事業所に正規雇用され、6ヶ月以上勤務する者


出典:令和4年度 丹波市予算ガイド




一見、若者の定住が促されそうなこの施策ですが、これに対しては多くの議員から質疑が噴出しました。その主な内容は、「なぜ対象が30歳未満なんだ?」と。


市当局の説明では


「対象者を30歳未満にした理由は、25〜29歳の丹波市での出生数が過去15年で半分以下まで下がってきていまして、丹波市内での出会い・結婚・出産・出生率の向上につなげていきたいからです」



とあったんですが、

え??
そりゃ全体的に晩婚化してるんだから20代の出生数が下がるのは当たり前の話ちゃうの??

というのが私の率直な感想。これだけ晩婚化が進んできているのに、いつの時代の話をしているんだろうと不思議で仕方ありません。例えば、今私の妻との間には3人の子どもがおりますが、その3人とも妻が30代の時に出産しています。

このように、30代でも40代でも子どもは産めるし、なんならもうすでに子どもを産んで育てている30〜40代の方が移住されたら、出産を待たずともその時点で子どもの数は増えます。

そんな中で、子どもの数を増やすことを目的とした施策において、30歳未満の人の移住はお金を出すほど奨励し、30歳以上の人の移住はお金を出すほどは奨励しないというのが、令和3年時点の丹波市の考え方ということです。

この手の給付金はもちろんどこかで線を引く必要があるわけですが、この30歳未満というラインが果たして今の時代に実効性のあるラインなんでしょうかね?時代錯誤な気がして仕方がない。



この点に関して複数の議員が質疑をしたわけですが、それに対する市当局の答弁を聞いていると、どうもこれは机上の統計データだけを見て作った施策なんじゃないかと感じてきました。なんか答弁に「リアル」を感じなかったんですよね。

そこで、私はまた別の角度から質疑しました。私が着目したのは、市内外の企業に正規雇用されていることが要件になっている点について、ちゃんと当事者の話を聞いて制度設計したのか?っていう点です。


Q:事業所に正規雇用されていることが給付条件にある。しかし実際に丹波市に移住した若者の話を聞くと、1社に正規雇用で依存するのではなく、複数の職場を掛け持ちして働き、自分らしい生き方を模索している人が多い。政策立案に当たってターゲットとなる若者移住者の声を直接聞いたのか?


A:いいえ、若者からの話は聞いていません。しかし若者を採用したいという企業側の話を聞き、私たちが帰ってきて欲しい年代と合致するため、事業所への正規雇用を条件に入れました。



わ!
ターゲットとなる若者の話をほんまに聞いてへんかったんや!


Q:この施策は若者定住奨励であり、事業所向けの施策は別で行うべきだ。ターゲットである若者の声を聞いていないから整合性が取れず、ちぐはぐな施策になってしまっている。政策立案にあたってターゲットの声を聞けないのか?


A:今後の「子育て検討会議」ではそのようなことも踏まえて検討します。




やっぱりな、って感じです。この施策についての議論を聞いていると、どうも現場に足を運ばずに、統計データや自分たちの思い込みで政策立案しちゃったっぽい雰囲気だったんですよね。丹波市の「子育て検討会議」って部署横断でやっているんですよ。もちろん「たんば”移充”テラス」を所管しているふるさと創造部も入っていたのに、なんで「たんば”移充”テラス」を活用して話を聞かなかったんだろう?あ、多忙だから?貧すれば鈍するじゃないけど、なんかそんな負のスパイラルに陥ってそう。


あのね、言うときますけど今の若者をナメたらあきませんよ、すぐ離職しちゃうんだから(笑)お金や安定や世間体なんかより大事なものがあるんですよきっと!私はIターン専用シェアハウスを立ち上げたり都市部の人たちと交流してきたりしたけど、そんな44歳の私でも今の都市部の20代の感覚はよくわかりません。それが田舎でずっと安定した暮らしをしてきたベテラン公務員ともなると、もっとわからなくて当然ちゃいますか。

だから当事者たちの話を聞かないと、彼ら彼女らの感覚なんてわかるわけないんです!

それにも関わらず、自分たちの固定観念に囚われたまま政策立案したってうまく機能するはずないじゃん。口では「多様性を受け止め」なんて言う割に、実際は若者の声を聞かずに自分たちの価値観を押し付けるあたりが民主的でない政治の在り方だし、丹波市役所は人権の受け止め方がやはり軽いなぁ、と思いますね。

これも後日、施策を考えた担当者と話をしていたんですが、この施策を作った根本にあるのは林市長が掲げる「帰ってこいよ」、つまり、Uターン者を増やすことを出発点に考えられたようです。まぁそれであれば若干理解を示すことはできますが、とは言え、Iターンだって含まれる施策にしたのであれば、「たんば”移充”テラス」にちょっとでも相談してみるなど、若者に対しての配慮は必要だったと思いますね。




それと、事業所向けには別立てでやるべきだと私は意見したわけなんですが、事業所向けには同パッケージ内に別に新設された施策「ふるさと就職奨励金」があるんですよ。


「ふるさと就職奨励金」
新規学卒者に対して、ふるさと就職奨励金を給付することで、市内企業の若者の労働人口を確保し、市内企業の安定的な雇用及び経済活動の維持継続を図ります。

[事業内容]
新規学卒者(中学校、高校、大学などを卒業又は中退したときから起算して2年以内かつ30歳未満の者)を対象に就職時に5万円、1年経過後に5万円を給付する

[対象者]
ふるさと就職奨励金の交付申請時に市内に住所を有し、市内企業に雇用された新規学卒者


出典:令和4年度 丹波市予算ガイド




この施策なら市内事業所の従業員確保を促しますよね。事業所向けの対策を強化したいなら、この金額を上げたらいいんです。

それに比べて先の「若者定住奨励金」は、従業員の確保に繋がるかどうかすらわからんですよ。だって、「若者定住奨励金」の対象者は「市内外の事業所に正規雇用され」とあるように、「市内外」ですからね・・・

市内事業所の経営者と話をしてこの「若者定住奨励金」施策を決めたのに、なんで市外の事業所までを入れてしもたんよ。チグハグさがハンパない。


さぁ、これだけ固定観念に囚われて立案された施策が、果たして価値観の異なる若者の移住を後押しするんでしょうか?こりゃ机上の空論で終わっちゃうかもしれんです。


そんなわけで、令和4年度当初予算案は本会議において賛成多数で可決されたものの、この施策に対しては議会委員会として以下の意見を付すことになりました。


若者定住奨励金については、子育て世代の移住やU・Iターンを促進する面からも、ターゲットとなる年齢層のニーズ調査を実施し、対象者の拡充や条件の緩和を検討されたい。




ほんと、ちゃんと現場に足を運んで当事者の話を聞いてよね。

記事一覧