前川進介の政治日記

議会報告 2021.6.6

【令和3年6月一般質問全文⑶】「MECE」「抽象思考」の概念を踏まえた学校教育の展開

 最後に教育長にお尋ねします。

 教育長は先日の議員総会の所信表明の中で、「未来の子どもたちを育てる教育の役割は非常に大きい」と述べられました。学力が低いと言われて久しい丹波市で、ぜひ教育を科学して実践していただきたい思いから、教育に関して質問をいたします。




●義務教育で「MECE」「抽象思考」を身につければ将来豊かに生きやすい


 私が今日これまで述べてきた「MECE」と「抽象思考」の概念は、質の高い仕事をするうえで非常に重要な概念であると同時に、実は本来であれば中学生くらいで学ぶ概念です。しかし高校も含めて実際の教育現場ではなぜか積極的に教えてくれる教員がおりません。


 「MECE」は数学の「場合分け」や「集合」などを入り口に学ぶことが多い概念ですが、これは科学的な思考のベースになりますから、あらゆる教科を学ぶ際に必要です。

 また「抽象思考」がわからなければ国語の現代文は絶対に解けません。それに、一見共通性がないような乱雑な物事からある共通性や法則を発見する「抽象思考」ができないと、数学にしろ何にしろ、あらゆる応用問題が解けません。英単語を覚えたり文法を覚えたりするのも「丸暗記」に頼ることになります。


 逆に言うと「抽象思考」ができれば日本語の読解ができて応用が利くわけですから、当然社会に出てから仕事を覚えるのにも強烈に役立つのです。

 世間では「学校の勉強ができても意味がない」という声を耳にすることがありますが、そこには大きな誤解があると私は考えています。学力とは人が豊かに生きていくうえで非常に重要な力です。ただ、学校での学びが社会に出てから応用できないようでは、全くと言っていいほど意味がないだけのことです。


 私が言うところの「学校での学びが社会に出てから応用できる」という考え方は、例えば「学校の物理の授業で電気を学んだから社会に出て電気工事の仕事をする」などという、学校で学んだ専門的な内容を仕事に応用するという話ではありません。

 国語でも数学でも英語でも、教科教育を通して身につけた「抽象思考」や「MECE」といった科学的な思考法によって、将来に渡ってあらゆる分野に応用を利かせ、創造性豊かに人生を生きていくことを指します。



 教育長は先日の議員総会で

・丹波市で学んだ子どもが医者になって帰ってくる
・経営者になって会社を立ち上げる
・農業に専念し、大規模な経営を始める
・環境に配慮し、持続可能な生活を目指した研究をする

そんなことに挑戦しようとする子どもたちを育む丹波市の教育を展開したいという夢がある

とも語られました。私もその方向性に大いに賛同しますし、そうした人材育成をするうえではこの科学的な思考法は非常に大きなウエイトを占めると考えています。

 目先の定期テストで良い点を取ることも大事かもしれませんが、教員には、そもそもは児童生徒が将来に渡って想像力豊かに生きられるだけの思考力を身につけさせるという観点を第一に持っていただきたいのです。

 私が過去に学習塾で教鞭を取ってきた中で、丹波市の公教育はそういった科学的な思考力を身につけさせる意図を持っていないように感じていました。それだと先に述べた「学校での学びが社会に出てから応用できない」教育に成り下がり、子どもたちの将来を豊かにすることは困難です。

 だからぜひ、私は学校教育を通して「MECE」や「抽象思考」などの科学的な思考力を身につける教育を実践していただきたいのですが、その点に関して教育長はどのようにお考えでしょうか?


●「MECE」「抽象思考」を教員が身につければ働き方改革も推進できる

 またこの思考力を身につければ、教員自身の身を助けることにもなると考えています。それは先日の議員総会で述べられた「教員の働き方改革の推進」に繋がるからです。


 基本的に抽象思考ができる人はそもそもの目的が見えていて、その目的を達成するための具体的な選択肢をMECEして考え、多くの代替手段を生み出すことができます。そのため、前例踏襲で旧態依然とした取り組みに固執することなく、より合理的な手段を選ぶことができます。ラクです。


 また抽象思考ができれば教育業界以外での合理的な取り組みを教育業界に応用することもできます。応用できればイチから自分の力で始めなくて済むので、タスク量を減らすことができます。


 本気を出す根性も大事ですが、根性だけでは心が折れることもあります。だからやはり根性論ではなく、科学的な思考を用いてラクに働き方を変えていくことが、まずは教員の身を助け、そしてひいては児童生徒の能力を引き上げる質の高い教育に繋がるのではないでしょうか。


 教育長は所信表明の中で、「教職員の自分改革の重要性」も説かれました。だからぜひ、教員もひっくるめてこれらの科学的な思考法を身につけていただきたいのですが、教育長はどのようにお考えでしょうか?


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