前川進介の政治日記

政策提案 2022.9.27

市民に開かれた学校づくりと、子どもの権利

新人戦、部活動合同チームの組み合わせ


中学生は夏の総体も終わり、そろそろ新人戦が始まりますね。実はこの新人戦の構成チームについて、この夏丹波市教育委員会とちょっと揉めたことがあったので、私なりの考えをブログに書きます。

ことの発端は今年の7月、山南中学校野球部に所属しているお子さんの保護者からの相談でした。内容をざっくり列挙すると、

・総体が終わって3年生が抜け、1,2年生だけでは9人揃わない中学校がある。
・9人に満たない場合、合併チームを作って新人戦に出場することになる。
・現状では、山南10人、和田4人、青垣7人、柏原9人。
・この数字だけを見ると和田4人と青垣7人が合併することになるのかもしれない。
・しかし和田中は来年4月から山南中と中学校自体が統合する。
・今年の新人戦は青垣中と合同チームを組み、来年の総体は山南中として出場するのはおかしくないか?
・中には和田中と山南中が合同チームを作ることに反対している教員もいると聞くが、生徒も保護者もその多くは和田中と山南中が合同チームを組むべきだと考えている。
・どうにかならないでしょーか?



というお話でした。

このような問題が起きた場合、まずは正しい事実を把握しておく必要を私は感じるので、丹波市教育委員会にアポを取ってヒアリングしてきました。

そこでヒアリングした内容は、

・そのような生徒、保護者の希望があることは承知している。
・県中体連の規定によると、原則的には人数が足りない中学校同士(今回なら和田中と青垣中)が組むことが基本となる。
・ただし、特別な事情がある場合はその限りではないが、新人戦は県大会にも繋がる大会だから、県中体連の理事会の承認を得る必要がある。
・丹波市中体連としては、和田中と山南中が組むペアリングも考えていて、7/22に開かれる理事会でその承認が得られるよう働きかけることが決まっている。



とのことでした。

県の中体連の規程にも「特別な事情がある場合は、県専門部を通じて、理事会の承認を得ること。」と記載がありますから、規程に則って事務を進めているわけです。

中体連大会参加規定
中体連大会参加規程に記載してある「特別な事情がある場合」に該当すれば・・!



ええ話ですよね。生徒や保護者の希望を承知していて、それが実現できるように働きかけているわけですからね。

ただ、今回はここからのやり取りを問題視しています。




その意向を保護者には伝えてはならない?なぜ?


教育委員会からは丹波市中体連の意向を聞いたので、

「じゃあ行政としてそのように取り組まれていることを、件の保護者さんにお伝えしますね。」

と言うと、全力で止められたのです。それはもうすごい勢いで止められました。

「なんで伝えたらあかんの?」って思いますよね。理由をザックリ言うと、こうでした。


・まだ和田中と山南中が合同チームを組むことが決まったわけではない中で情報を流されると、和田中と山南中が合同チームになれなかった場合に保護者から批判されることを避けたいから。



ちょっと意味がわからなかったので、私からは


・仮に県中体連の承認が得られなかったとしても、丹波市中体連としては和田中と山南中が組めるように努めていたわけだから、丹波市が保護者からどうこう言われる筋合いがない
・何か決定しなければならない時に関係者との情報共有はコミュニケーションの基本で、実際に今、情報を共有しないことによって不振がる生徒・保護者が居るわけだから、情報を共有すべきだ



と伝えたんですが、教育委員会には全く聞き入れてもらえませんでした。市民の「知る権利」はどこへ行ったんでしょうか。

そこで結局、件の保護者には、

「和田中と青垣中が組むプランA以外に、別のプランBの可能性を模索すべく、7/22の県中体連の理事会にかけられるらしいですよ!」

とお伝えしました。なんでも具体的なことは伝えちゃダメで、抽象表現に留めれば良いらしく、この表現だと教育委員会もOKなんですって。意味わからん。

こうした表現にはなりましたが、市の基本スタンスを理解された保護者はホッと安心感を抱かれたようでした。やっぱり情報を隠さず共有していくプロセスこそが大事やと思いますよ、ほんと。


そして7/22の理事会では、

・市として良かれと考え取り組むのであれば、県がそれを止めることはしない

的な回答が得られたらしく、無事承認が得られ、今年の丹波市の新人戦は「和田中、山南中合同チーム」「青垣中、柏原中合同チーム」が大会にエントリーすることになりました。



学校には閉ざさずに開けていただきたい!


さて、ここから後日談、というか、今回の問題の本質を考えます。

今回の決定に至るまでの一連の振る舞いが行政として適切だったのか疑問を抱いていたのは、私だけでなく件の保護者の方もでした。そんな我々は意気投合し、8月に入ってから教育委員会に足を運びました。私はもう教育委員会にとっちゃ嫌われ者だろうから、この口うるさい議員が話をするより、当事者である保護者から直接語っていただいた方が教育委員会に対する説得力が高まるかな、とも思いましてね。

会議室では、「やっぱりプロセスを共有してもらえないと心配になってしまう」と保護者の方から直接その思いを語っていただき、それに対して教育委員会は、「もっと早くから情報を共有すべきだったと反省している」とコメントされました。

今回の一件で、教育委員会に情報共有の重要性を少しでも感じていただけたようでよかったです。


私ね、議員になってから教育委員会にずーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと伝え続けていることの一つに、「とにかく閉ざさずに開けて!」というリクエストがあります。学校ってほんと閉鎖的で、何かあったらすぐに閉じちゃう。今回のように閉じてしまったら地域の理解なんて得られないし、とてもじゃないけどコミュニティ・スクールを推進しているなんて言えないでしょう。こんなんじゃ児童生徒だけじゃなく、働いている職員だって暗くなっちゃいますよ。だからオープン!オープン!とにかく開けてくれ、と。

でも、学校側からするとオープンしにくい雰囲気があることも理解します。

何かあったら「先生のくせに」とか言われがちだし、中にはモンスターペアレントと言われる保護者からの執拗な要求に疲弊する、という話もよく聞きますしね。

もちろん教員も改めるべきは改めないとなりませんが、中には筋の通らないクレームを押し付けてくる保護者もいると聞きます。「先生のくせに」とレッテルを貼っての攻撃に対しては、その保護者と教員との間に入って中立的に受け止める役割が必要な気がしますね。例えばPTAにその機能を持ってもらうとか?わかんないけど。なんせ、今のままじゃ教員がビクビクしてまともな教育活動ができないんじゃないかと危惧しています。

そんな状況だったら、できるだけ余計なことは口外せずに、内々で終わらせてとにかく問題を表面化させないようにしたい、そういう思いに至る教職員側の心理はよく理解できます。

実は私たち市議会議員も似たようなもんでしてね。何も言わなければ「議員の仕事が見えてこない」と非難され、自分の思いや考えを発信すれば事実を確認されることもなく主観的に「市民の敵だ」「議員の権力を振りかざしている」なんて罵詈雑言を浴びることもありますからね。こういう「レッテル攻撃」は市議会議員になる前には経験してこなかったので、血税で報酬をもらっている公務員アルアルなのかな。

ちなみにそんな時に支えてくれるのが後援会かな。後援会長に愚痴をこぼすと、ちゃんと受け止めてくれます。やっぱり人間はそういう支えてくれる存在が必要。一人じゃ立ち向かえない。



まぁこのように、どんな業界でもレッテルを貼る「アンチ」は一定数います。それはそれとして受け止めた上で、私は前向きに仲間作りに勤しんでもいます。

この地域社会をどうしていきたいのか、自分なりのビジョンを語り、聞かれた質問には何でも腹を割って答える。また相手の話もじっくりと聴いて、気持ちや考えを受け止める。そうしてビジョンをブラッシュアップしていく。私の経験上、そういう関わりをしていると信頼できる仲間が増えていきます。

この仲間作りをしていく時に気をつけているのは、仲間になってもらえなかったとしてもくよくよしないことです。そりゃ相手も人だから、いろんな思いを持っておられるし、腹を割って話をしても理解してもらえないこともあります。そんな時にくよくよせずに、次に行く。

イチローが打率ではなく安打数にこだわったように、とにかく仲間を一人でも多く増やす。率は下がることもあるけど、数は増えることしかないからね、そう考えると気が楽なんですよ。

そうして信頼関係を築けたなら、そこからはその人たちの力も借りながら、我々が共有するビジョンを叶えていけるように取り組んでいけるだろうし、そういう市民参画の営みこそが、この地域を住み良くしていく民主主義の王道だと思うんです。


そしてそれは学校の世界でも同じちゃいますかね。例えばこれから中学校の部活動は段階的に地域に移行していきますが、そうなった時に、地域への移行をどれだけ有意義な形で実現できるかは、教育長はじめ教職員が地域の人たちと対話をして、信頼関係を築いていくことが一番のポイントになると思っています。

そのためにもとにかくオープンにする!そして腹割って対話する!そしてどんどん仲間を作っていって、地域全体で子どもたちを育てていく。

これしかないと思うな〜



意見を表明して参加できる子どもの権利はどこへ行った?


それと今回の一連の行動に対してもう一つ抱いている懸念は、子どもの権利がやはり重要視されていないことです。

そもそも今回の合同チームの話は、中学生がプレーするチームのことであって、それを教員がどうするかを決めていること自体に違和感があるんです。

「子どもの権利条約」にある4つの原則の一つに、

・意見を表明し参加できること
子どもは自分に関係のある事柄について自由に意見を表すことができ、おとなはその意見を子どもの発達に応じて十分に考慮します。



という原則があります。子どもがプレーする部活動なのですから、そのチーム編成に子どもが意見するのは当たり前のこと。今回、市の中体連はその意見を汲んでくれたわけですが、願わくば、意思決定においては当事者である生徒たちも巻き込んでほしかったな。

丹波市の中体連では生徒と一緒に考え、「和田中、山南中合同チーム」「青垣中、柏原中合同チーム」で大会にエントリーできるよう、県中体連に働きかけることを決定しました。

っていう世界観の方が、子どもの人権を尊重していると思いません?
今回は子どものために大人が環境を整えてあげたとは言えますが、私からすると子どもの権利を尊重しきれていない過保護な関わりにも見えます。


なんで私が子どもの人権にこだわっているかと言うと、

・子どもの人権を守ることが自己肯定感を育むベースになるから
・自己肯定感が高いと強くしなやかに生きていきやすいから
(逆に低いとに鬱や引きこもりのように自虐的になるか、他者に攻撃的になりがち)
・自己肯定感の高い人たちで構成される社会は寛容で、治安も良いから



だから子どもの人権を守ることは、その地域の明るい未来に直結することなんです。社会変革まではちょっと時間がかかりますが、それだけの先を見通して今から手立てを打っておくことを求められるのが政治の世界でしょ?


というわけで、こうした子どもの人権を尊重する関わりが丹波市に広がるべく、私は6月議会で「子どもの権利に関する理念条例調査研究特別委員会」を立ち上げる提案をし、全会一致で可決され、委員長に就任しました。

我々第5期議員団の任期はあと2年ちょっとありますから、じっくり時間をかけて、子どもの人権の重要性について職員や市民の皆さんと対話を深めていこうと考えています。

「子どもの人権を守ることが地域の未来を明るくする」、これは絶対に間違いないです。だから教職員はそのことを深く理解して、学校現場で実践していただきたいと願っています。

そして、我々はこれから2年ほどかけて条例制定に向けて活動していきますんで、子どもの人権に関して興味関心のある方は、ぜひ一緒に活動していきましょう!お気軽にご連絡くださいね!


そんなわけで、以上が今回のチーム編成でちょいと揉めた経緯と、そこから私が感じたことでした。ほんと、子どもも教員も(あと議員も)、全ての人の人権を守り抜ける地域社会にすることが大事やと思っています。

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